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紛まがふことなく、それは神原喜作だつた。
と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。
急いであたりさはりのない返事をすると、今泉はもう隣りの人の方を向いて挨拶をした。
「それからね」
だが、さう云へば、一歩いちぶ非の打ちやうのない正文に練吉のやうな息子ができたこともふしぎにちがひない。事実、当人の練吉さへ、自嘲めいて時々さう口にするのであつた。
「なあ、ジョン!」
「いや、それが――」
間もなく彼は、こゝからよりもあの路からの方が、河原で一人で働いている自分をはるかに見つけ易いことに気づいた。瞬間彼は、この広い河原に自分の隠れこむ場所はないかと探すかのやうに、きよろきよろあたりを見まはした。だが、自転車の男は崖上の路に気をとられているのか、まだこちらに気がつかないやうだつた。徳次は下向きになつた。見まいとした。けれども、何かしら気になつて、顔を紐か何かで上うは向きにひつぱられるやうであつた。
と、きよろりとした目つきに返つた徳次は、立ちはだかつたやうな恰好になりながら、房一の傍に停つて訊いた。
「ふうん」
と、誰かが大声で叫んだ。
「まあ、葉書でざつと町内に出しときましたがね」